開通タグホイヤー⑤
香田(仮)のことが頭から離れず、ボーっとして何も手につかない
あの後、チッスを奪った事で調子に乗ろうとした香田(仮)を引き剥がし、「タイムリミットが近づいて来た」だの「時間が止まれば良いのに」だのグズグズと言いながら、最後は割とさっくりと帰って行った。 その強引さと自信、一体どこから来るのか理解に苦しむ。様子を伺う、という事を知らないのだろうか。 しかし困った事に、嫌ではなかった… かといって好きになったのかと言うと、それは良く分からない。 不思議な感覚だった。 いわゆる、恋愛らしきものの入口に立ち戸惑う、高揚感みたいなものを確実に感じていた。くすぐったいような、そわそわとした気持ち。私は一体何を言っているのでしょうか。
この日を境にモーニング娘。の「リゾナントブルー」が聴けなくなった。
♪どのくらい私を好きなの 遊びじゃキスしない~♪
忘れてはいけない、同時に湧き上がってくる言いようの無い不安。やっぱり、あんな事するなんて軽く思われてるのかな、とかいうネガティブな考えが巡りだす。これが正常な判断が出来なくなる、一番厄介な感情とも言えるのではないだろうか。案の定、私はそれに抗うことが出来ずこんなLINEを送った。
『最初のデートであんな事するなんて抵抗があるので、怖くてもう会えません』
はい、これは嘘です。
会いたくないのであれば、そのまま会わなければ良いだけで、わざわざお知らせする必要はありません。しかし、ここは あ え て ご丁寧にお伝えしたいスタンス。 そう、お分かりのように私は面倒なメンヘラ的こじらせ女なので、気を持たせたいあまり、まんまとこんな事を送ってしまう人間なのだ。あの名曲「それが大事」風に言うならば『されるのが怖いのではなく されなくなる事が怖い』のである。良いよ、分からなくて。 有り難い事に(?)そんなクソ面倒な私を構ってくれる人というのは、おおよそこういう時まともに返してくる傾向にあったりする。良いのか悪いのかは別として、香田(仮)もそうだった。
『ごめんなさい。楽しくて楽しくて、止められなかった。もう、駄目なんですか…?』
超優秀てき回答。私は『デモデモダッテ』と返しながらも内心満たされまくりのワクテカ take a chance状態。 そしてその3日後に、再び会う事になった。
「こないだはゴメンね」「いえ、私が悪いんです」とか言いながらも、わざわざ面倒な燃料を投下させておいたお陰で、すっかり温まっておるわけで、香田(仮)のトレンディ要素も相まって、
「でもわたしホントは嫌じゃなかったです」 「じゃあ…またキスしていいの?」 「////」
とかいう空気になってしまうのは必然。メンヘラとバブルは相性最高かよ(知らんがな)
車は市内の有名な夜景スポットに着き(夜景好きだよな) スカスカの会話もそこそこに、香田(仮)の顔がズズズイと迫ってきた。
※写真はイメージです
「あの。香田(仮)さんて、私のこと好きなんですか?」
香田はウーンと考え言った。
「興味はある。…かな(キリッ)」
「興味…」
「好きとか、付き合うとか、そういうものに縛られたくはないんだ。ただ…楽しい時間過ごせたら良いなって思ってる(キリッ)」
「…」
キマったとでも思ったのかよダッセーな…はさておき、はっきりそう言われた事でちょっと寂しくもあった。が、かといってここで「マジ惚れたぜ!」とか言われたかったかというと、それも違う。それは困る。ってかそれは嘘だ。こんなもの何とでも言える…これくらいの回答が一番しっくり来る気がした。ダッセーけど()
「私もそうかも」
と言いながら目を閉じた。
香田(仮)のチッスは何というかとても良かった(恥)何というか、マシュマロのようなのである。犬みたいなのとか、高速モグラ叩きみたいなのしか知らない私には大層新鮮だった。やっぱり嫌じゃない。そして調子に乗った香田(仮)は「もう止められないかも…」と囁き、あろうことか今度はまさぐりはじめたのである。
お、おお…なんと大胆な…(恍惚)
はっ!
こ、これは…まさか…
来る途中に通り過ぎた、いわゆるご休憩処のピンクの看板が頭をよぎった。 これは、連れて行かれる…連れて行かれる!連れて行かれる!!いや、行け!さっさと行けや!!!
香田(仮)は無言で車を走らせる…。 私は修行僧のように目を固く閉じる。 「さっさと連れていけや!!」を悟られるのは恥ずかしいので、ご休憩処の暖簾をくぐったところで「えっ…あっ、あれっ////うそっ////どうしよ///」とか、とりあえず言うつもりだったのだ。まぁ無意味なのですが。恥じらいは最大のスパイスだとは思いませんか(知らんがな)
しかし華麗に車はご休憩の前を通り過ぎ… (あれっ?違うとこに行くのかな…)
気づけばそのまま送り届けられていた。
ズコー!!!!
やらんのかーーーーい!!!!
つづく