ri0ca’s diary

やり直しがきかない人生

開通タグホイヤー⑥

香田(仮)がバス停まで送ってくれた。 「じゃあ、また予定が分かったら」と言われたので「また連絡します」と普通に返す。むしろいつも以上に普通に。 時計は午前11時を指していたので、バスの時間まで待ち合い室のソファに座った。

そしてこの数時間の出来事をしばし思い返してみる、何回も何回も。そしてため息をつく。

いてもたってもいられず、友達にLINEを送った。ついにこの日が来たのだった。                  

話を数時間前に戻そうと思う。 香田(仮)から「今から少し時間ありますか?」とLINEが来たのは朝の8時だった。

早!  

というか、私はたいそうムカついていた。あの時。あの場所で。どう考えても今からご休憩処という場面で、華麗にスルーされたからである。恨みは深い。目を瞑っていた私に「寝てんの?」と言われた時の、あの絶望感。

「明日朝早くてサ…、これがサラリーマン時代なら何も考えないんだろうけど、そういう訳にはいかないからね(キリッ)」

キリッ、

じゃねーよ!!!!!カッコつけやがって、だいたい下半身出したまんま言ってんじゃねーよ!!!!くそがくそがくそが…。

     

「で?

何すか、朝から。あぁ!朝マックでも行きます?(棒)」  

迎えに来たのは9時過ぎだった。しかも次の約束まで1時間半しか時間が無いと来たもんだから、ますます意味不明である。しかし、そう言いながらもホイホイと会いに出てくるのが私の特徴であり良いところ(棒)だ

イキリまくりの私とは裏腹に、香田は神妙な面持ちで語りはじめた。「どうしても謝りたくて…」

「あんな途中で帰るなんて、恥をかかせるような事をした。」 「前の旦那さんの事、あんな悪く言っておいて、俺も同じ事したんだと後で気づいた。」 「俺は最低だよな。ホントそいう所、気づけない男なんだ、情け無いけどね。」 あまりにも畳み掛けてくるので、返す言葉が無かった。 というか、「何ですかその、律儀なやつwwww」と笑ってしまった。香田(仮)は「笑いごとじゃ無いって」とションボリしていたが、この妙な、変に律儀な部分が、すごく良いなと思えてならなかった。

そして車はマックではなく、暖簾をくぐった。

ファ!!!!

修行僧になる間も無い、この不意打ち。待ち焦がれたとはいえ、突然暖簾の先の世界に飛び込んで(って、ただの駐車場だが)戸惑いと焦りで目が回った。 「い、1時間半しか無いのに」「いいんだ、構わない(キリッ)」「えぇ…」 Aさんの散文詩「抱き合う時間はなくても構わない、キスができればそれでいいんだ」のようである。1時間半あれば、それでいいんだ。…。 さっきから香田が凄くカッコよく見えはじめてる…さっきからキリッ!がキュンときている。あの最初のおっさん感からすると倍、さらに倍。そして、さらに倍。

「ま、巻きで!やんないと!ひゃっは!」…間が持たないと至らん事を言ってしまうのは私の特徴であり良いところ(棒)であるが、香田は「そういう考えは好きじゃない。」と途端に顔を曇らせた。

えぇー…そこは真面目に怒るのね…。

手が冷たくなっていた。ちょうもうれつにビビっていたのである。「まっ、俺は男だから場慣れしてるから~」と謎の経験値アピールをされたが、もはやどうでもよかった。顔も見れなかった。これからどうなっちゃうんだろ~一つしかないだろ~ああばばばばばばどうしようどうしよう。

ギャー!!!!!!!!

 

   

  はぁ~。と、またため息をついた。時間は13時になっていた。あれからずっとソファで放心状態だったのである。余韻に浸り杉も甚だしいのだが、動けなかったのだ。友達から、どうだった?と返事が来ていたので「めちゃクソに良かった」と返した。    

そう、めちゃめちゃのクソクソに良かったのである。

  何回も思い返し過ぎて、研ぎ澄まされたダイジェスト映像のように仕上がっていた。しかも何度再生しても劣らず薄れず満たされた気持ちにしてくれるのだ。今にも香田の声がリアルに聞こえてきそうである。

「何て何て素晴らしいんだ」と心から思った。何しろ自分の今居るこの世界が、まるでバラ色のように輝いて見えたからである。こんなに心から幸せを感じたのは、本当に久しぶりだったのだ。

  驚いた事がもう一つある。香田は年の割りに(失礼)細マッチョな良い体型だった。お分かりの方もいるかもしれないが、私といえば

f:id:ri0ca:20161227022127j:plainこんなのとか

f:id:ri0ca:20161227005046j:plainこんなのを好む、

個性的な性癖…いわゆるデブ専()だったはずである。

ボヨッボヨのお腹に顔を埋め、腹の肉で溺れて興奮する変態野郎だったのだ。それがどうしたことか、香田の引き締まった尻から伸びるスラリとした足を見て「え、超かっこ良い…」と思ってしまったのである。 香田は私の中2から長らく続いてきたデブ専という歴史をあっさりと崩したのである。バブルをトレンディに潜り抜けて来た世代ならではなのか、そのポテンシャルたるや無限大なのだ。

こうして、晴れて開通を果たした私だったが、困った事に今度は毎日ヤキモキとするようになった。次会うまでが死ぬほど長く感じられ、とにかくやりt…会いたいという気持ちが抑えられなくなっていた。7年何てことなく過ごしていたのに、この変わりよう。

私はこれを「開通ハイ」と呼んだ。

この開通ハイに溺れてしまった私だったが、順調に次の開通予約をとりつけていた…そのはずだった。ある日、香田のLINEはこうなっていた。

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おわり